KG FIGHTERS 第55回ライスボウル初優勝 2002年1月3日
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コーチのコラム(守備)
Fighters-Dの肖像堀口 直親
―風 〜不安と闘い試行錯誤を繰り返した日々―

最後の最後まで

 1月2日。東京スタジアムで練習・・・と申しましても、軽く動いて汗をかく程度で仕上げました。悩みっぱなしのLBたちの顔つきを見回しますと、どこか余裕を感じました。あれ・・・おかしいなぁ・・・引き締まっていない。不安と覚悟とでピリピリしていると思ったのに。その場は何も言わずに立ち去り、先に東京ドームに参りました。
 「今日はもうミーティングせぇへんから」と星田に電話。これだけは伝えておけ、と。不安ばかりではどうしようもないんですが、楽勝ムードになるはずもなく、ましてや「おのぼりさん」的になっても困ると、少しばかり気を引き締めるように。
 でも、鳥内監督に怒られたようです。「何しに来たんや」と。
 その夜、監督・コーチで明日の試合のことやこれまでの思い出なんかを語り合いました。ほんの少しですが、暗雲が立ち込めている状況。こちらは「やっとの思いでここまで来れた」と息を切らせていたんですが、現役の中にはそういう緊張感が失せかけている者もいたようです。
 少し作戦をたてました。明日、試合前にどう接してやろうか、と。

 東京ドーム。相変わらず迷路のようでややっこしいですね。
 控え室に入ると、どこかピリピリしていました。これこれ、このムード。これならOK。と思いきや、1年生の中には気の抜けた顔しているやつもいました。まだ足りない。睨みつけるが、1年生はあまり気に留めてくれません。過度の緊張感、すぐにでも脱したくなる張り詰めたムードにどっぷりと浸り、そこから解放されるとき、思わず雄叫びを上げ感極まって涙が流れてくるんですけど・・・う〜ん、試合メンバーだけが、そんな気を発していました。全員がそうあってほしかったんですが、まだどこかに甘さがあったのでしょう。大いに反省。
 パッと目につく特徴的な頭。目の前に星田がいました。手にしていたペットボトルでその頭を叩きました。
「いて・・・」
 慌てて振り返りました。少し強かったか。
「どないや?」
「・・・あとはやるだけです。」
 嘘つけ、この野郎。前夜に怒鳴られて「あとはやるだけ」なわけなかろう。
「なんで昨日言うたこと、みんなの前で宣言せぇへんかったんや」
「・・・あ、すんません。」
 どうやら忘れていたようです。それどころじゃなかった、というのが正解かもしれません。せっかく大事なことを、と考えて言ったんですけど、仕方がありません。「すんません」という星田の合唱ポーズに、それ以上は突っ込めませんでしたが。

「今の、俺です!」

 いいプレーしたら胸張ってこちらを見る。何か失敗したら手を合わせて自責を伝えてくる。LBと私の試合中での意志疎通。フィールドから私に向かい、さも
 「今の、俺です!」
と言っているかのように。 ブロックサインを間違えると、私も苦笑いして「すまん」の構え。そのたびに、星田は勝ち誇った顔をし、平郡は腹を抱えて笑う。財満は全く意に介さず。これ以上「揚げ足」とられてたまるかと必死になる。なんでサイン送るだけで必死にならなあかんのやろか・・・
ただその意思疎通が、次のコールを楽にしてくれた。別にコーチのためにやってるんじゃない、でも共に闘っているのもまた事実。「今のは俺がうまくできなかっただけ」と伝えてくれれば、迷いなくコールし続けられる。
 そんな単純な行為がまた、一体感を与えてくれた。何回、拝まれただろうか。


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