KG FIGHTERS 第55回ライスボウル初優勝 2002年1月3日
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コーチコラム(攻撃)
THE QUARTER 〜衝撃の10分間〜/小野 宏

「モメンタム」から「フロー」へ

 モメンタムが我々の背中を強く押している、と自覚していた。科学的に証明できないが、ゲームには潮の満干に似た「モメンタム」が確実に存在し、大きな要素となる。流れが来ると、選手の集中力が高まり、コールも当たりだす。その状況がさらに深化すると、特有の現象が起きる。ゲームを支配している感覚がチームにあふれ、選手から雑念が消えてファインプレーが生まれる。個人に起きるというよりも、チーム全体に訪れるというのが実感だ。こうしたスポーツや遊びでの強い没入経験を表現する概念として、シカゴ大学の心理学者、チクセントミハイ教授が「フロー」と名づけて研究している。まさに選手もコーチも「無心」と呼ぶべき境地に入り、行為と意識が融合する。勝ち負けを超えた存在になって、場の流れ(フロー)と一体化する。チームは、徐々にそうした状態に近づいていた。
 ゴール前9ヤードからのプレーも迷わずに出てきた。根拠はないが、進む確信があった。ダブルタイトからWRがインモーションしてきてフライモーションに移行し、ベリーオプションの動きからQBだけがHBへのフェイクの後で逆サイドを突くカウンタープレー。飲料はOLB河口を連続してブリッツさせていた。そして、このプレーも外側から内側へスタンティングをかけた。完全にプレーコールが当たった。突っ込んできた河口を、予測していたG蔵谷が正確なステップ、正確なポジショニングで勢いを利用して内側に押し込むと大きなレーンがあき、尾崎はセイフティのタックルを一人はずしてエンドゾーンに駆け込んだ。14−6。選手にもコーチにも、「よし」という気持ちが芽生えた。しかし、誰も一喜一憂するつもりはなかった。リードしようが、リードされようが、ただただ目の前のプレーに集中することが必要だった。"One at a time"――浮かれたり、落ち込んだりしていたら、ベストのプレーは生まれてこないのだ。
 さらに、次の飲料の攻撃も、関学が完全に抑え込んでパントに追い込んだ。飲料のベンチが予想外の展開に動揺しているのが分かった。準備していた「ある作戦」を思い切って出す時だと決意した。


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