KG FIGHTERS 第55回ライスボウル初優勝 2002年1月3日
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コーチのコラム(守備)
Fighters-Dの肖像堀口 直親
―風 〜不安と闘い試行錯誤を繰り返した日々〜―



不安とため息からのスタート


 ゲームプランを作るという厄介な作業、頭のいいコーチならすぐに作り上げてしまうんでしょうが、私の場合は随分と時間を要してしまいます。要領が悪いんです。その度に選手から非難を浴びます。選手たちは直接口には出しませんが、その表情やらしぐさを見ていれば「またかいな」という呆れ果てた心境が伝わってきます。Rice Bowlもまた例外ではありませんでした。
 相手がアサヒ飲料チャレンジャーズ(以下「飲料」)に決まった時、即座に浮かんできたのは…#27、中村多聞選手の顔と身体と「えげつない」走り、でした。
 「あんなん、学生レベルでどないして止めぇ言うねん」
 ビデオを見ながらブツブツぼやいていますと、隣にいた大寺コーチも頷くばかり。私は何か助言をしてほしかったのですけど・・・。D-Leaderの星田は既に頭を抱えていました。愛弟子・平郡は青ざめるばかり。Safetyの矢野もまた何も語りませんでしたが、その顔は蒼白と申しますか、「俺んとこまでストレートに抜けてきたらどないしたらええんやろ」という感じで引きつっていました。力哉は平静さを保っていましたが、どう動けばいいのかイメージすら浮かばない様子でした。力哉がLBになるということで実質的にD-Lineのリーダーとなった西村もまた、「とにかくやってみます」と言いながらも難しい表情を見せていました。最初の週、打開策は・・・全く浮かびませんでした。
 「はぁ・・・」「ふぅ・・・」「おぇ・・・」
 別に疲れていたわけではないのですが、ため息ばかりがミーティングの席を埋め尽くしていました。それだけ強大な相手と試合をする…自覚だけはあったようです。
 甲子園ボウルが終わった後、5日間ほど完全休養。土曜日からRice Bowlに向けて練習することになっていました。それまでに、賢いコーチならある程度のことはまとめているんでしょうけど、私は「とにかく強いタックルできるようにせぇ」としか言ってやれませんでした。それがまた、不安を募らせてしまったようです。なんとも情けないコーチだこと…。

「ええかっこさらすな」

 不安があれば吐き出せと言い続けた。しかし、真っ正直に不安だと言うことがまるで恥でもあるかのように受け止める。だったら完璧か、と尋ねれば、実は不安だらけだという。ならどうして不安を出さないのか、と問い詰めれば、ただ黙って頭を下げる。
 「ええかっこさらすな。」
と何回言ってきただろうか。
 2001年のシーズンは不安先行、ネガティブな気持ちとの葛藤の連続。これは即ち私自身が不安だから、なのだろう。私の不安は現役の不安、現役の不安はこちらに不安として返ってくる。
 何も言ってこなければ完璧に準備できたんだと考え、こちらから何も言わないでいると、「何をしたらいいのかわからないんです」と嘆く。
 表情を見て曇り切っている時に、いい加減に吐き出せと言えば、「何が不安なのかさえわからないんです」と唇を噛み締める。
  関西学生リーグ、甲子園ボウルと通じて、とにかく選手と共に不安と闘う日々が続いた。合宿所を出るのが午前様という日が何日もあった。甲子園ボウル前など2日続けて一睡もできなかったことさえあった。 「なんでここまで悩むんか」と苛立ち、怒りさえ覚えた。
  それはRice Bowl前も同じだった。


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