1.重篤事故を予防するための方策

     (1)熱中症の予防策

     (2)頭部外傷の予防策

     (3)頸椎損傷の予防策

     (4)心不全の予防策

 

(1)熱中症の予防策

■ 暑熱馴化

 8月1日に始まる夏季練習の前段階から徐々に高い気温の中で動くことに身体を慣れさせていく。夏季練習の初期段階は 上半身のみのスタイルで練習を行い、その後フルスタイルでの練習へと移行させていくというように調整を行う。

■ 練習時間帯の制限

夏季(8〜9月)の練習時間は午後4時半以降に限定している。

■ 環境暑熱計による練習環境の管理

WBGT(湿球黒球温度)の値が28℃以上の場合は練習開始時間を遅らせて気温の低下を待つ。

WBGTとは、労働環境において作業者が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を行う簡便な指標であり、人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れて、乾球温度、湿球温度、黒球温度の値を使って計算する。WBGT基準値指数に基づく附属書A「WBGT熱ストレス指数の基準値表」に示される基準値で28℃を超える場合は、激しい運動は避けるように定められている。

■ 水分補給

夏季の練習は、通常の Squeeze bottle に加え、試合時に使用している大型のポリバケツ3つに0.3%の食塩水と氷を入れ、グラウンドに出し、自分の好きなタイミングで水分補給ができるようにしている。 また、毎日の 練習前と練習後に体重測定を行い、体重が大幅に減少している者については、日常生活および練習中の水分補給を積極的に行うように指示している。

■ 合宿期間の体調管理

8月中旬に行う夏季合宿においては、午前・午後の練習の前後に体重、体温、尿検査によるタンパク、血尿、頭痛の有無などをトレーナーが全員確認して体調のチェックを行う。

 

 

(2)頭部外傷の予防策

MRI(核磁気共鳴断層装置)検査

 入部する時点で全員がMRIによる頭部(脳)の断面画像を撮影して脳神経外科医の診断を仰ぎ、コンタクトを伴うアメリカンフットボールに対する適性を確認する。

■ 首、僧帽筋の強化

 コンタクトの際に 頭部が振られるスピードを和らげる為に、頭部の付け根である首、僧帽筋を トレーニングで 強化する。

■ 適正なヒット技術を習得

 ヒットの瞬間は、きちんと顔を上げていること(フェイスアップ)、あごをひき、首を肩の中に埋めるような状態をとること(ブルネック)、両手を活用してヘルメットだけのコンタクトにならないようにすることなどをしっかり身につける。

■ 夏季練習時の水分補給

 脱水によって脳震盪および頭部外傷が起こりやすくなる可能性があり、生活においても練習中においても水分補給はこまめにするように指導している。

■ 体調管理の徹底

 頭痛、発熱、睡 眠不足などについては本人の申告を基本として、トレーナーが体調管理に注意している。

■ 合宿期間の体調管理

 8月中旬に行う夏季合宿においては、午前・午後の練習の前後に全選手の体重、体温、頭痛の有無、尿検査によるタンパク、血尿などをトレーナーが確認して体調のチェックを行う。

■ ヘルメットの軽量化を図る

 過去の頭部外傷事例の分析から医師が指摘しているとおり、重いヘルメットはより速い頭部の回転を引き起こし、頭部外傷を引き起こす誘因となる。ヘルメットを軽くするために、クラライトやチタンなどでできている軽いフェイスガードの利用を原則としている。

■ CogSport の導入

 重篤な頭部外傷の発生率と脳震盪の発生率には相関関係がある。重篤事故を防ぐには脳震盪に対する的確なマネジメントが欠かせない。脳震盪は脳の認知機能の低下を招き、練習復帰には外見上の回復だけでなく脳認知機能の回復を確認することが必要である。 CogSport では脳震盪から表面上回復したように見える選手を復帰させる際に、ウェブ上で反応速度、反応の正確さ、記憶力などを測るテストを行い、本人の正常時の数値と比較して脳機能が完全に回復しているかどうかを検証するシステムである。このテストによる脳震盪のデータを蓄積し、年間の発生率を指標として減少に努める。

 CogSport の日本代理店である株式会社ヘルス・ソリューションのページ

■ 脳震盪から復帰までのプロセス設定とその遵守

 脳震盪を発症した場合、

 @脳外科で CTスキャン、MRI 検査を含めて受診する。

 A自覚症状がなくなった段階で Cogsport のフォローアップテストを行う。

 Bテストによって正常な状態に回復したことをチームドクターに報告し、復帰の承認を受ける。

 C監督が最終的に復帰させるかどうか判断する。

 

 

(3)頸椎損傷の予防策

■ 適正なヒット技術を習得

 ヒットの瞬間は、きちんと顔を上げていること(フェイスアップ)、あごをひき、首を肩の中に埋めるような状態をとること(ブルネック)、両手を活用してヘルメットだけのコンタクトにならないようにすることなどをしっかり身につける。

■ ヘルメットを武器にした当たり方の禁止

 頭頂部を使ったヒット(スピアリング)の禁止を徹底する。

■ 首、僧帽筋の強化

■ レシービングでの回転キャッチの禁止およびランナーの前転禁止

 レシーバーが捕球する際に、飛び込んで空中で前方に回転する動作は、角度によって地面と頭部が衝突し、頚椎の傷害が起きる可能性がある。また、すべてのボールキャリアが倒れる際に前転してはならない。回転の動作中に後方から相手選手に当たられるのは非常に危険である。倒れる際も顔を上げておくこと、回転する場合は前方ではなく横転または斜めに回転して頭部が地面と衝突するのを防ぐ。

■ 正しい防具の装着の指導

 ネックロールなどを使用する場合、ショルダーパッドに適切に固定させるように指導する。

 

 

(4)心不全の予防策

■ 総合的な健康診断の実施

  年に2回、クラブ検診として、内科診察、尿検査、血液検査、血圧、心電図の検査を行っている。なかでも心電図は直接、心臓を調べる検査なので、外部の専門医に再チェックを依頼し、必要に応じて負荷心電図、ホルター心電図の検査も行っている。

■ AEDの配備

 突然死の主要原因である「心室細動」への対策として、AED (自動体外式除細動器)をグラウンドに配備している。          

■ 救急救命講習会への参加

  毎年、シーズン前には監督以下の指導者および学生のトレーナー等が救急救命講習会を受け、心肺蘇生術および AED 利用の訓練を行う。

  

 

 

 

 

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